昨年に行われた『第5回京都府立大学の改革に関する有識者との懇談』で、 金武祚社長が講演された内容です。情報は古いですが、クリップされましたので、ご紹介します。
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【SOURCE】京都府立大学
第5回京都府立大学の改革に関する有識者との懇談
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第5回京都府立大学の改革に関する有識者との懇談
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第5回京都府立大学の改革に関する有識者との懇談
本学の大学改革を進めるにあたり、様々な分野で活躍されている有識者からのご意見を聴くため、下記のとおり、第5回目の有識者との懇談を開催しました。
●開催日時
平成 19 年7月2日(月)午後3時 30 分〜5時
●場所
本学 本館 2 階 第 1 会議室
●講師
株式会社ファーマフーズ代表取締役社長 金 武祚 氏
<講演録> 「産学研究交流を通してみる大学の姿」
講師:株式会社ファーマフーズ代表取締役社長 金 武祚 氏
■はじめに
私は、ベンチャーを立ち上げた当初から、京都府立大学の先生にはお世話になっておりますので、こういう機会を設けていただいたことを光栄に思っております。私たちが今やっていることをお話ししながら、実はすべての過程が大学の先生方のご指導とご協力なしにはできなかったということについて、そして今後大学の先生方と私たちが、こういうことができればいいかなというあこがれについて、お伝えしたいと思います。
そのために、まず、ファーマフーズってどんな会社か、どんなことをやっているかというアクティビティをお話しさせていただいて、次に、産学研究交流について、それから私の主観なのですが、京都府立大学について触れさせていただこうと思います。
■私たちがいま挑戦していること
私たちの会社は、桂坂の京大の入口に昨年社屋を建てたのですが、現在ちょうど 100 名体制で研究しております。ここから京都市内が眼下に見えますので、非常に見晴らしのいい所です。3階には、社内用ですが、ブエナビスタというレストランがあり、京大の先生もたくさんいらっしゃいます。社内では、ほとんど若い人で、中でも女性が6割です。当初数名でやっていたのですが、今ちょうど 80 名くらいになりました。なんとか 100 名以内でやりたい仕事を楽しくやろうということです。社内の壁に「ここには夢がある。笑いがある。」という額をかけております。
やはり夢があって笑いがあるのが私たちの研究ですので、その気持ちを若い人に伝えると、若い人はすごい力を発揮するのです。よく、若者が耐えられないというのは、私はうそだと思うのです。何をしていいかはっきり分からないだけで、焦点だけ合わすと、私たちよりはるかに力があるということを常日ごろ感じておりますし、また、それを実証したいというのが私達の毎日の仕事かもしれません。さて、それでどんなことをやっているかといいますと、「免老神」という言葉を使っています。免疫と老化と神経。生命活動と健康維持に関わる3つの要素に作用する機能性食品素材の開発をみんなで楽しくやろうということです。
簡単にいいますと、ギャバ(GABA:Gamma Amino Butyric Acid)。これも京都府の試験場の先生方の指導を受けて、それからいろんな大学の先生方の指導を受けたものです。通常でしたら、脳波を調べてα波が出ていますねという程度でギャバの仕事を展開するのですが、私たちは、まず大量にギャバを作ることに成功しました。そして、静岡県立大学の先生と、杏林大学医学部の先生方の指導で全国にギャバ・ストレス研究センターというのをつくって、大きなうねりをつくるという仕事をやりました。
ギャバというのは簡単なアミノ酸なのですが、私たちのようなベンチャー企業や、その他食品や製薬などの企業の方々にどんどん参画していただいて、ギャバが社会的に重要であるということを、大学の先生方のご指導下でやるわけです。どういう展開をしたかといいますと、奈良県にある谷瀬のつり橋。日本一長いつり橋ですよね。高さが 55 メートルで、全長 300 メートルです。この橋を渡るのですが、このようなストレスをかけた場合に、ストレスマーカーが、ギャバを摂取したときに軽減するかどうかという、ダイナミックな仕事を静岡県立大学の先生とで実施しました。
(満員電車の写真を指して)また、京都ではなかなかこういう感覚はないと思うのですが、電車の中で自分のかばんがどこにいってしまうか分からないような感じの混み具合で横浜から東京新橋までの間に、ギャバを摂取した方と摂取しない方で、ストレスがギャバで軽減できるかどうか。こういう展開を杏林大学医学部の先生のご指導で私たちがやってきたということなのです。もちろん、私たちはここにくるまでに動物実験をしてきましたが、先生方のご指導がないと、こういう展開ができなかったと思います。
私たちのこれまでのストレス実験について、結果的にいいますと、株主総会などの重要会議ストレスとか、上司からしかられるストレスとか、いろんなストレスを試験したのですが、そのなかでは満員電車ストレスが一番のストレスだったのです。こういう方がギャバを摂取すると、ストレスがどんと下がるということを発表したら、ものすごく分かりやすいということでした。消費者の目線に立ったこういうようなデータを大学と組むということです。結果的に飲料やチョコレートなどいろんなギャバ含有商品が発売されています。
もう一つは、卵の仕事をいろんな形でやろうということも考えました。世界中で最も食されている食品というのは、やはり卵か牛乳かなんですね。たまたま共通して色が白いということなのですが、本質的な違いがあるわけです。牛乳は温めるとホットミルクになります。ところが、卵を温めましたらヒヨコになるわけです。つまり卵を、私たちがサイエンスという視点で見るかどうかで大きく分かれてくると思うんですね。ポイントは 21 日間でヒヨコになるということです。牛乳は温めても牛にならないじゃないですか。ということは、この閉鎖系の卵の中で、21 日間で骨が出る、血管が伸びる、神経が伸びる。こういうことを意識せずに卵焼きで終わってしまうともったいないということです。つまり1個約 60 グラムの卵を「白いバイオのカプセル」として見よう、というのが私たちの考えです。
卵の中身をよく調べるとか、えさをコントロールするとか、親鶏をコントロールすると、卵がかなりの付加価値を持って新しいビジネス展開できうるということです。その一例ですが、先ほどの話、親鶏がこの卵を温めたら 21 日間でひよこになるのですが、これは誰でも知っていることです。ところが、このひよこが足を持っている。その骨はどこからきたか。これは誰も分からない。卵からヒヨコが出るということは誰でも知っていたのですが、3年前まで、この骨がどこから出てきたかということは、誰も分からなかった。私たちの会社の若い人がこれを発見したんです。
結論からいいますと、卵黄の中に骨を 21 日間でつくる成分があるということを見つけました。この実験では京都府立大学の佐藤先生にタンパクを精製する新しい技術を、教えていただきました。近畿大学の先生からも、いろいろ指導を受けました。私たちは企業です。研究結果を形にしてさまざまな商品が発売されます。製菓会社さんから骨や歯に良いヨーグルトのほか、最近では製薬会社さんとの共同研究から生まれた商品がすごく売れているのです。今は九州地方だけで売っていますが、期待の10 倍くらいと聞いています。
次に、私どもが何をしているかということですが、「葉酸たまご」という研究です。ご承知のように、葉酸というのは、葉っぱの酸、ホウレン草にもある酸です。また、去年の横浜市大の調査ですが、女性、特に妊婦の9割に葉酸が不足している。母子手帳を見ましたら、葉酸が不足すると赤ちゃんの正常な発育ができないとちゃんと書いているのですが、妊娠初期(1〜2ヶ月)に特に必要なので、母子手帳をもらってから、葉酸が不足していたとわかっても少し遅いわけですよね。それより、若い女性、特に大学生の女性、結婚を前提にした女性は、葉酸が不足すると絶対に駄目だということなのですよ。
そこで東京慈恵会医科大学の先生や奈良女子大などの女子大学の先生の指導で、葉酸の成分をニワトリのえさ用に加工し、それをニワトリが食べて、1つの卵に 70 マイクロ以上の葉酸が入っている卵を私たちで開発することができたわけです。3年前からデパートで売り出しました。葉酸が不足すると胎児の先天異常である神経管鎖塞障害が発生する可能性があります。ところが、葉酸をとることで、障害の発生が抑えられるということです。もちろん、それは卵1個 70 マイクロ以上の葉酸がきちっと入っているということを担保しないとできません。こういう展開を私たちだけではできないのですが、大学の先生方の指導がありましたので、早い展開が可能だということです。
もう一つは抗体の話です。ちょっと専門的な話になりますが、ウサギ(哺乳動物)に抗原を接種すると、抗体が血中にできるわけですね。しかし、私たちがやっておりますのは、ニワトリに抗原を接種すると、抗体が卵にくるということです。このシステムを使えば、(世界中で食べられている食材である)卵を使ったバイオということができるのではないかという研究を行っています。バイオテクノロジーといいますと、遺伝子の組み換えとか、プロテインエンジニアリングとか、そういう分野がもちろんあるのですけれども、日本発のバイオという、もっとやさしいバイオがあるのではないかというのが私たちの考えなのです。ニワトリというのは、日本の人口プラス1割ですから、約1億数千万羽飼育されています。このニワトリはほぼ毎日のように卵を産み落とします。年間 300 個産み落としますので、安全で、安価に、大量に抗体を作れる。この分野を私たちはやろうということです。
抗体のターゲットの一つはピロリ菌です。胃潰瘍の原因菌。ピロリ菌をニワトリに免役すると、ピロリ菌をやっつける抗体ができるというシステムですね。いろんな実験をして、3カ国で5つの大学の医学部の先生との研究データを発表したのです。オボプロンというのが鶏卵抗体製品の名前なのですが、先ほどのピロリ菌をやっつける抗体がヨーグルトに入っているのです。日本、韓国、中国、台湾の4カ国で入っているのです。毎月私たちが供給しております。重要なことは、容器に「オボプロン配合」と書いてあることです。パソコンでもそうですけれど、どのパソコンにもインテルが入っているということは書いていますよね。いろんな食品にオボプロンなど私たちのブランドが入っている。こういうことを展開できるような会社になりたいということです。これも、京都の大学の先生をはじめ、いろんな先生と共同で研究しました。これらがなければ、こういうことはとてもできなかったと私は思っております。
ピロリ菌が成功しますと、次はインフルエンザウイルスはどうか、ということです。インフルエンザウイルスの抗体をつくるわけです。これはかなり大掛かりでして、早稲田大学の先生や国立感染研の先生たちと一緒にやったのです。空気清浄機のフィルターに応用しました。(空気清浄機の写真を指して)このふたを開けてみますと、このフィルターに私たちの抗体が入っている。インフルエンザウイルスをブロックする。こういうものが今、マーケットに出ています。IgY というのは Immunoglobulin Yolk のことで、Yolk というのはニワトリの黄身のことですから、ニワトリの黄身からとれる抗体が、食品とか化成品とか化粧品とか診断薬とか、それからメディカルディバイスといった形で限りない展開ができるということを私たちは実証しているということなのです。
■産学研究交流
去年、私たちはマザーズに上場することができました。思えば私たちがやってきた事業のすべてが、産学研究交流がなければできなかったかもしれません。私たちがベンチャーをやるということは、イノベーションをやるということに尽きるわけです。私個人的には自由に研究をしたいということ。もう一つは、その研究が何か世の中の役に立つような形にしたいということです。イノベーションについて、大学の先生方と私たちの違いは何かと言いましたら、基礎研究だけかどうかですね。私たちは新しい技術で、新しい市場を立ち上げて、それを形で見せて、販売して、それを資金に回収して、それが社会的インパクトを与えるところまで。これを広い意味で、今、イノベーションととらえているわけです。つまり、イノベーションというのは、発明の商業化と、今私たちはとらえております。
大企業でしたら基礎研究がありますし、機能の応用開発があって、大量生産をやってみて、市場に入ってどれだけもうかったかと、すべて分担がはっきりしているわけです。それぞれのギャップがありますので、これはイノベーションギャップと呼ばれているらしいですが、私たちはそんな時間がないので、ほとんど同時並行的にやる。そのためには、大学の先生方とのコラボレーションがなければなりません。また、日本に今、大学発を含めて 2000 社くらいベンチャーがあるというのですが、それぞれが独立独歩でできることではないと思います。世の中に誰もやっていないようなことをやるというのであればいいのですが。やはりコラボレーションは絶対必要だと思いますので、そういう点で、私は大学の先生にご相談して良かったなと思うんです。ただし私たちも他力本願ではいけませんので、「私たちはこういうアイディアがあります。」「こういうことをお願いします。」と明確な提案をしなければなりません。
これは最近の報告ですが、アメリカでは、ご承知のように新しい薬とか、新しいバイオ製品が登録される中でその半分は、バイオベンチャーから出ています。ゲノムとか再生医療などを見ましても、8割9割は公的研究機関か、大学か、ベンチャーから出ており、大企業ではないわけです。日本はどうかというと、まったくまだまだ逆なのです。まだまだ大企業が自己完結主義でやっている部分があるのです。私の主観ですが日本では「ベンチャーと大学」が特殊な分野では合弁するくらいのことを考えるべきだと思います。例えばベンチャー企業も大学に投資すべきだと。大学発のベンチャーが今、1500 とも 2000 ともいわれております。ところが、正直言いまして、私は(これらの経営は)なかなか難しいと思います。そうすると、より蜜に一緒に組んでやったほうが私はいいと思います。実は先月、東京でバイオサミットという会議がありまして、そこへ行ってきたのですが、こういう展開がないと日本は絶対アメリカに勝てないということをお話しさせていただきました。
■京都府立大学について
私の会社のメンバーにもここの卒業生がいますので、京都府立大学に対するイメージを聞いてみたのです。「京都府立大学ってどんなイメージなの?」と聞きましたら、「北山にありますね」と。「植物園の横にある大学」、「資料館の横にある大学」、「畑のある大学」、「農業」ですね。こういうイメージが出てきました。これは全部当たっていると思います。しかし、私が考えますのは、京都府立大学は「京都の大学」だというメッセージが絶対必要かなと思います。といいますのは、立命館大学でしたら、立命館太平洋アジア大学というのを大分県につくることができるわけです。同志社大学も奈良県でもどこにでもできますよね。京都府立大学は、大阪につくると京都府立大学とは言えないから。私たち社内の何人かで議論したんです。「京都府立大学って」ということで話し合いをしたのです。そしたら、やはり「京都の大学」だというメッセージがもっと明確にあったら、もっと分かりやすいかなということでした。それをベースに戦略的、戦術的に京都府立大学を私たちはどう見たらいいのか。
これは私の主観ですがやはり、歴史と文化の「知」の大学だというメッセージが必要だと思いますし、また、伝統と格式の「技」の大学だということがあれば、もっと分かりやすいかなという感じがいたしました。私も韓国高麗大学の先生を一時期やっていたのですが、韓国の人も、日本への造詣心がものすごいわけです。だから日本に留学したい。この近辺に来たいという学生さんがいっぱいいらっしゃいます。やはり京都という特性で、京都を知らない地球人はいないと思いますので、特にアジアにおける科学と芸術のハブだという形のメッセージを送られると、もっと分かりやすいかなという点で「京都府立大学は京都の大学だ」と言う事でございます。
2番目、ちょうど1カ月前にイノベーション 25 戦略会議の記事で、皆さん読まれたと思いますが、毎日新聞の朝刊に書いてあったある先生の一文ですが、「大学は大相撲に学べ」と書いてありました。これは、ある点で、的を射ているかなと思います。というのは、大相撲が始まりますが、幕内力士の 28%は、両横綱を含め、上位はモンゴルの人とか外国の人なんですね。当初は非常にアレルギーがあったのですが、この先生がおっしゃるのは何かというと、「大相撲は国際化でやっと生き残りに成功した」ということが書いてありました。今、サッカーなどを見たら、どこでも外国人がいっぱい入っているのですが、大相撲だけは国技だからということで反対の議が挙がったのですが、現実はもう、そうではなくて、「国際化で生き残りが果たされた」と。この見方は面白いなと思います。
そこに書いてあるのですが、「日本の大学は知の鎖国状態にある」と。京都府立大学は京都の大学だということですので、アジアのハブになるということをより強くメッセージされたら。私は、この一文が言い得て妙な感じがするなと思いました。これは私の会社の考えですが、ファーマフーズは今ちょうど 80 名くらいなんですが、人材確保の理想型として、私は、3分の1理論というのを考えています。海外出身の専門家を3分の1集める。女性の専門家を3分の1集める。あと残りは平均的な男性。ポイントは、この平均的な男性が下支えをきっちりとやるということですね。海外から専門家が来ても文化の違い等でいろいろとトラブルがあるのです。けれども、互いに協力すると、トラブルがないような形で受け入れの措置ができる。女性の専門家というのはやはり時間的な制約があるじゃないですか。お子さんをみないといけない、家庭をみないといけない。しかし、その中で力を発揮するのです。
3分の1が海外の人であると問題があるのではと先生方は感じられると思うのですが、逆に、私を含めて多くの先生方が若い一時期、海外に行かれたと思います。私はカリフォルニア大学のバークレー校にいたのですが、ほとんど半分以上がアジア系でありますし、いろんな形の外国の人が受け入れられ、それがうまく吸収できるので、アメリカのサイエンスが進んだ部分もあると感じました。すべてではないと思いますが。そう考えますと、恩恵を受けた私たちは、日本に帰ってきてそれを全部忘れてしまって、門を閉ざすのはおかしいじゃないかと。何かアクションするとやはりリアクションがあるのですが、門戸を開くことが、実はハブになるということではないかと、考えております。
もう一つは、地域における京都府立大学がシンクタンクになるというならば、伝統と革新の「技」の大学という形で、いろんなことをやられたほうがいいかなということです。府立大学のホームページを何回かよく見ました。パンフレットも見ましたが、例えば、京野菜や、緑茶、麹、竹、北山杉、京町屋とか環境部門がございましたし、建築のデザインセクションもございましたので、こういうものをより具体的なテーマに、もっと分かりやすくやられたら良いと考えました。
例えば麹ひとつにしましても、今、有用菌といったら乳酸菌と思われているわけです。ところが酒、しょうゆ、みそというのは麹菌です。麹というのは乳酸菌よりはるかにいいのです。国菌というのですね。例えば、桜が国花でチョウチョでしたらオオムラサキが国蝶のように、麹は国の菌ということです。私は、麹こそまさに日本で、もっと研究すべきだと思います。京野菜も、京都府立大学の中村先生がやっておられますようにもっと研究が出来ればと思っています。京都大学の先生はアフリカの薬用植物をやっておられたり、東南アジアのものをやってみたりするのですが、私は、京野菜というのはまだまだやれるところがあるなという感じで思っていますし、技の大学としてもっと京都のことを研究されてはどうか。
北山杉だって非常に面白いと思うのです。皮をはぐ。あの皮をどう使っているとか、いろいろあると思うのです。私共がビジネスを展開するのだったらこういうことがあるなと思います。これに関係しまして、今、京野菜に取り組んでいるのです。まず京野菜麹という「野菜麹」をつくってしまう。それから、プロテアーゼとかセルラーゼとかいろんな性能をぐっと引き上げておいて、発酵させて、京野菜何々とかというのを作るということをやっています。すでに私たちは京野菜ヨーグルト、これは商標を取っております。それから京野菜ジュース、京野菜青汁。商標も取っております。
この間大手飲料メーカの所長さんと会ったのですが、「例えば、京野菜ジュースというのがあったらどうしますか」と聞いたら、「すぐ応用させてください」とおっしゃいました。というのは、「おいしい野菜ジュース」などいろいろな製品があるのですが、もう限界があるわけですね。そういうところに「京野菜」を考えると消費者が強く、あこがれがあるわけですね。私たちが九州に行くときでも、京都駅で京野菜つけものを買って行ったら、「わあ、京野菜が来た」と言うじゃないですか。この喜びの部分をサイエンスでアプローチします。京野菜といったらすぐ漬物となりますが、ヨーグルトとか新しい形で私たちはやろうと思うのですが、こういう点に先生方のご指導を受けるなら、もっと私たちの限界を超えるものができるのではないかと考えております。
もう一つは、京町屋。これは、先生方のカリキュラムの中で京の建物のデザインということが書いてありましたので、これは私たちにも関係があると思います。(写真を指して)ちょうど 90 年ものの京町屋がこれです。私たちはバイオをやっていますが、さきほどの話のように京都発バイオベンチャーのやるべきテーマとして、京野菜の研究開発に取り組んでいます。その関連でいろいろ調査して、会社の新規事業を検討しているうちに、「京都の町屋でレストランをやろう」ということになりました。(写真の看板を指して)京町屋の雰囲気を生かした「貴匠桜」という名の京野菜レストランです。東山建仁寺の近くです。皆さん、一度お越しになってください。
3番目に、戦術的にまずはシンクタンクをどうしたらいいかということです。知的情報の発信基地になるということを明確にメッセージする必要があると思います。そして一方では知的情報が集う地点。こういうシステムをつくるということが、私は、京都府立大学が、より積極的にやるべきだと。すでに、キャンパスプラザ京都でやっておられるのですが、できましたら、市民の皆さんに京都府立大学にお越しになっていただく仕掛けを絶対つくる必要があると思います。先生方と京都のオピニオンリーダーによるマッチングの講演会を仕組むというのが必要だと思います。例えば2年間のプログラムをつくります。2カ月に1回、例えば偶数月にすると決めましたら、2年間で 12 人ですよね。京都にある会社のトップの方々に来てもらって、芸術と文化とサイエンスということのトップセミナーをやるということを決めるとどうかなと思うのです。これは非常に難しい。難しいけれど、私はできると思うのです。
2年間分はフィックスして、この場所でやる。そこに、本学の先生方とペアで新しい哲学思考という形で、ものづくりと人づくりをやりましたら、私は京都の大学としての京都府立大学が定着すると思うのです。こんなことをすることが実は知の発信になると思います。もう一つ、知的情報が集うセンターになるべきです。今度はトップセミナーの方々が来られて、いろんなことをやってもらおうと思うと、大学の入口が狭い。(写真を指して)私には京都府立大学の入口が狭いなという感じがしました。表も裏も狭い。フェンスがずっとありますので、セキュリティはいいと思うのですが、非常に狭いと思います。(次の写真を指して)こちらは京都大学の桂キャンパスですけれども、どこを回ってもフェンスがないわけです。フェンスが一つありますが、それは京都大学と書くための看板です。大学の看板だけがフェンスなのです。京都府立大学の校門では、「入口に通行証がない人は入れない」と書いてあることです。ところが京都大学桂キャンパスの場合は、「開かれた大学ですから、どうぞ入ってください」というわけです。この違いは何でしょうか。
アメリカではオープンなキャンパスが多いのです。京都大学の場合はどこでも入れますし、レストランは一般の人が入れるというシステムになっています。それで私が考えますのは、府立大学でフェンスをなくすことはできないのですが、もっと入口を一般の人も入れるという形にしないと。人を呼んで集いのセンターにするということをもし考えるのだったら、そういうことが必要かなと思います。もう一つは、先程生協、それから学生会館などを回って見てきたんですが、私たちが企業的に考えましたら、明るいコンビニを入れる。コンビニを入れましたら、もっと品揃えがありますし、購買力がぐっと上がると思うのです。今、ある大学では、ローソンと組んでコンビニを入れています。全然違和感がないと思うのです。もう一つは、スターバックスなどのコーヒーチェーン店を入れると、もうそれだけで府民が入ってくると思うんです。大学周辺を車で回ってみたことがありますが、先程も話しましたが、京都府立大学の周囲はほとんど全部フェンスですよね。私は、農場の中程のところで可能でしたらフェンスを取り払い、そこを「ガーデンスターバックス」というものにしましたら、街の人がいっぱい入ると思うんです。学生さんもいっぱいになると思うんです。それは収益になりますし、農場が一般の人に見られる農場になりますので、もっと生きたものになると思います。ローソンとスターバックスと、入口が広くなるだけで。そんなに費用が掛からなくて、開かれた大学になりうるのではないかと。簡単にできることはこんなことであると。ずいぶん変わるのではないでしょうか。
実は私たちもやっているのでこういうことが言えるという実証ですが、「ギャバ・ストレス研究センター」というのを毎年やっていますし、「葉酸と母子の健康を考える会」や、「たまご研究会」フォーラムというのを、やっております。毎年 200〜300 名募ってやるんです。私たちのような 80 名の会社でやるのは大変なのですが、コンセプトを明確にしまして、きちっとしたメッセージがあると、全国からお越しになっていただくのですね。来ていただくと、そこに情報が付いてきます。やはり大学にお越しになっていただくと必ず情報が付いてきます。批判も付くのですが、新しい情報が付くのではないかと思います。素晴らしい方々に来ていただくと、大学でのサイエンスも、芸術としても新風が吹くと思います。そして、人・科学・芸術・伝統と革新の京都府立大学があらためて発進するのではないか、ということを最後に申し上げて終わりにいたします。ありがとうございました。
Copyright (C) Kyoto Prefectural University All Rights Reserved.
本学の大学改革を進めるにあたり、様々な分野で活躍されている有識者からのご意見を聴くため、下記のとおり、第5回目の有識者との懇談を開催しました。
●開催日時
平成 19 年7月2日(月)午後3時 30 分〜5時
●場所
本学 本館 2 階 第 1 会議室
●講師
株式会社ファーマフーズ代表取締役社長 金 武祚 氏
<講演録> 「産学研究交流を通してみる大学の姿」
講師:株式会社ファーマフーズ代表取締役社長 金 武祚 氏
■はじめに
私は、ベンチャーを立ち上げた当初から、京都府立大学の先生にはお世話になっておりますので、こういう機会を設けていただいたことを光栄に思っております。私たちが今やっていることをお話ししながら、実はすべての過程が大学の先生方のご指導とご協力なしにはできなかったということについて、そして今後大学の先生方と私たちが、こういうことができればいいかなというあこがれについて、お伝えしたいと思います。
そのために、まず、ファーマフーズってどんな会社か、どんなことをやっているかというアクティビティをお話しさせていただいて、次に、産学研究交流について、それから私の主観なのですが、京都府立大学について触れさせていただこうと思います。
■私たちがいま挑戦していること
私たちの会社は、桂坂の京大の入口に昨年社屋を建てたのですが、現在ちょうど 100 名体制で研究しております。ここから京都市内が眼下に見えますので、非常に見晴らしのいい所です。3階には、社内用ですが、ブエナビスタというレストランがあり、京大の先生もたくさんいらっしゃいます。社内では、ほとんど若い人で、中でも女性が6割です。当初数名でやっていたのですが、今ちょうど 80 名くらいになりました。なんとか 100 名以内でやりたい仕事を楽しくやろうということです。社内の壁に「ここには夢がある。笑いがある。」という額をかけております。
やはり夢があって笑いがあるのが私たちの研究ですので、その気持ちを若い人に伝えると、若い人はすごい力を発揮するのです。よく、若者が耐えられないというのは、私はうそだと思うのです。何をしていいかはっきり分からないだけで、焦点だけ合わすと、私たちよりはるかに力があるということを常日ごろ感じておりますし、また、それを実証したいというのが私達の毎日の仕事かもしれません。さて、それでどんなことをやっているかといいますと、「免老神」という言葉を使っています。免疫と老化と神経。生命活動と健康維持に関わる3つの要素に作用する機能性食品素材の開発をみんなで楽しくやろうということです。
簡単にいいますと、ギャバ(GABA:Gamma Amino Butyric Acid)。これも京都府の試験場の先生方の指導を受けて、それからいろんな大学の先生方の指導を受けたものです。通常でしたら、脳波を調べてα波が出ていますねという程度でギャバの仕事を展開するのですが、私たちは、まず大量にギャバを作ることに成功しました。そして、静岡県立大学の先生と、杏林大学医学部の先生方の指導で全国にギャバ・ストレス研究センターというのをつくって、大きなうねりをつくるという仕事をやりました。
ギャバというのは簡単なアミノ酸なのですが、私たちのようなベンチャー企業や、その他食品や製薬などの企業の方々にどんどん参画していただいて、ギャバが社会的に重要であるということを、大学の先生方のご指導下でやるわけです。どういう展開をしたかといいますと、奈良県にある谷瀬のつり橋。日本一長いつり橋ですよね。高さが 55 メートルで、全長 300 メートルです。この橋を渡るのですが、このようなストレスをかけた場合に、ストレスマーカーが、ギャバを摂取したときに軽減するかどうかという、ダイナミックな仕事を静岡県立大学の先生とで実施しました。
(満員電車の写真を指して)また、京都ではなかなかこういう感覚はないと思うのですが、電車の中で自分のかばんがどこにいってしまうか分からないような感じの混み具合で横浜から東京新橋までの間に、ギャバを摂取した方と摂取しない方で、ストレスがギャバで軽減できるかどうか。こういう展開を杏林大学医学部の先生のご指導で私たちがやってきたということなのです。もちろん、私たちはここにくるまでに動物実験をしてきましたが、先生方のご指導がないと、こういう展開ができなかったと思います。
私たちのこれまでのストレス実験について、結果的にいいますと、株主総会などの重要会議ストレスとか、上司からしかられるストレスとか、いろんなストレスを試験したのですが、そのなかでは満員電車ストレスが一番のストレスだったのです。こういう方がギャバを摂取すると、ストレスがどんと下がるということを発表したら、ものすごく分かりやすいということでした。消費者の目線に立ったこういうようなデータを大学と組むということです。結果的に飲料やチョコレートなどいろんなギャバ含有商品が発売されています。
もう一つは、卵の仕事をいろんな形でやろうということも考えました。世界中で最も食されている食品というのは、やはり卵か牛乳かなんですね。たまたま共通して色が白いということなのですが、本質的な違いがあるわけです。牛乳は温めるとホットミルクになります。ところが、卵を温めましたらヒヨコになるわけです。つまり卵を、私たちがサイエンスという視点で見るかどうかで大きく分かれてくると思うんですね。ポイントは 21 日間でヒヨコになるということです。牛乳は温めても牛にならないじゃないですか。ということは、この閉鎖系の卵の中で、21 日間で骨が出る、血管が伸びる、神経が伸びる。こういうことを意識せずに卵焼きで終わってしまうともったいないということです。つまり1個約 60 グラムの卵を「白いバイオのカプセル」として見よう、というのが私たちの考えです。
卵の中身をよく調べるとか、えさをコントロールするとか、親鶏をコントロールすると、卵がかなりの付加価値を持って新しいビジネス展開できうるということです。その一例ですが、先ほどの話、親鶏がこの卵を温めたら 21 日間でひよこになるのですが、これは誰でも知っていることです。ところが、このひよこが足を持っている。その骨はどこからきたか。これは誰も分からない。卵からヒヨコが出るということは誰でも知っていたのですが、3年前まで、この骨がどこから出てきたかということは、誰も分からなかった。私たちの会社の若い人がこれを発見したんです。
結論からいいますと、卵黄の中に骨を 21 日間でつくる成分があるということを見つけました。この実験では京都府立大学の佐藤先生にタンパクを精製する新しい技術を、教えていただきました。近畿大学の先生からも、いろいろ指導を受けました。私たちは企業です。研究結果を形にしてさまざまな商品が発売されます。製菓会社さんから骨や歯に良いヨーグルトのほか、最近では製薬会社さんとの共同研究から生まれた商品がすごく売れているのです。今は九州地方だけで売っていますが、期待の10 倍くらいと聞いています。
次に、私どもが何をしているかということですが、「葉酸たまご」という研究です。ご承知のように、葉酸というのは、葉っぱの酸、ホウレン草にもある酸です。また、去年の横浜市大の調査ですが、女性、特に妊婦の9割に葉酸が不足している。母子手帳を見ましたら、葉酸が不足すると赤ちゃんの正常な発育ができないとちゃんと書いているのですが、妊娠初期(1〜2ヶ月)に特に必要なので、母子手帳をもらってから、葉酸が不足していたとわかっても少し遅いわけですよね。それより、若い女性、特に大学生の女性、結婚を前提にした女性は、葉酸が不足すると絶対に駄目だということなのですよ。
そこで東京慈恵会医科大学の先生や奈良女子大などの女子大学の先生の指導で、葉酸の成分をニワトリのえさ用に加工し、それをニワトリが食べて、1つの卵に 70 マイクロ以上の葉酸が入っている卵を私たちで開発することができたわけです。3年前からデパートで売り出しました。葉酸が不足すると胎児の先天異常である神経管鎖塞障害が発生する可能性があります。ところが、葉酸をとることで、障害の発生が抑えられるということです。もちろん、それは卵1個 70 マイクロ以上の葉酸がきちっと入っているということを担保しないとできません。こういう展開を私たちだけではできないのですが、大学の先生方の指導がありましたので、早い展開が可能だということです。
もう一つは抗体の話です。ちょっと専門的な話になりますが、ウサギ(哺乳動物)に抗原を接種すると、抗体が血中にできるわけですね。しかし、私たちがやっておりますのは、ニワトリに抗原を接種すると、抗体が卵にくるということです。このシステムを使えば、(世界中で食べられている食材である)卵を使ったバイオということができるのではないかという研究を行っています。バイオテクノロジーといいますと、遺伝子の組み換えとか、プロテインエンジニアリングとか、そういう分野がもちろんあるのですけれども、日本発のバイオという、もっとやさしいバイオがあるのではないかというのが私たちの考えなのです。ニワトリというのは、日本の人口プラス1割ですから、約1億数千万羽飼育されています。このニワトリはほぼ毎日のように卵を産み落とします。年間 300 個産み落としますので、安全で、安価に、大量に抗体を作れる。この分野を私たちはやろうということです。
抗体のターゲットの一つはピロリ菌です。胃潰瘍の原因菌。ピロリ菌をニワトリに免役すると、ピロリ菌をやっつける抗体ができるというシステムですね。いろんな実験をして、3カ国で5つの大学の医学部の先生との研究データを発表したのです。オボプロンというのが鶏卵抗体製品の名前なのですが、先ほどのピロリ菌をやっつける抗体がヨーグルトに入っているのです。日本、韓国、中国、台湾の4カ国で入っているのです。毎月私たちが供給しております。重要なことは、容器に「オボプロン配合」と書いてあることです。パソコンでもそうですけれど、どのパソコンにもインテルが入っているということは書いていますよね。いろんな食品にオボプロンなど私たちのブランドが入っている。こういうことを展開できるような会社になりたいということです。これも、京都の大学の先生をはじめ、いろんな先生と共同で研究しました。これらがなければ、こういうことはとてもできなかったと私は思っております。
ピロリ菌が成功しますと、次はインフルエンザウイルスはどうか、ということです。インフルエンザウイルスの抗体をつくるわけです。これはかなり大掛かりでして、早稲田大学の先生や国立感染研の先生たちと一緒にやったのです。空気清浄機のフィルターに応用しました。(空気清浄機の写真を指して)このふたを開けてみますと、このフィルターに私たちの抗体が入っている。インフルエンザウイルスをブロックする。こういうものが今、マーケットに出ています。IgY というのは Immunoglobulin Yolk のことで、Yolk というのはニワトリの黄身のことですから、ニワトリの黄身からとれる抗体が、食品とか化成品とか化粧品とか診断薬とか、それからメディカルディバイスといった形で限りない展開ができるということを私たちは実証しているということなのです。
■産学研究交流
去年、私たちはマザーズに上場することができました。思えば私たちがやってきた事業のすべてが、産学研究交流がなければできなかったかもしれません。私たちがベンチャーをやるということは、イノベーションをやるということに尽きるわけです。私個人的には自由に研究をしたいということ。もう一つは、その研究が何か世の中の役に立つような形にしたいということです。イノベーションについて、大学の先生方と私たちの違いは何かと言いましたら、基礎研究だけかどうかですね。私たちは新しい技術で、新しい市場を立ち上げて、それを形で見せて、販売して、それを資金に回収して、それが社会的インパクトを与えるところまで。これを広い意味で、今、イノベーションととらえているわけです。つまり、イノベーションというのは、発明の商業化と、今私たちはとらえております。
大企業でしたら基礎研究がありますし、機能の応用開発があって、大量生産をやってみて、市場に入ってどれだけもうかったかと、すべて分担がはっきりしているわけです。それぞれのギャップがありますので、これはイノベーションギャップと呼ばれているらしいですが、私たちはそんな時間がないので、ほとんど同時並行的にやる。そのためには、大学の先生方とのコラボレーションがなければなりません。また、日本に今、大学発を含めて 2000 社くらいベンチャーがあるというのですが、それぞれが独立独歩でできることではないと思います。世の中に誰もやっていないようなことをやるというのであればいいのですが。やはりコラボレーションは絶対必要だと思いますので、そういう点で、私は大学の先生にご相談して良かったなと思うんです。ただし私たちも他力本願ではいけませんので、「私たちはこういうアイディアがあります。」「こういうことをお願いします。」と明確な提案をしなければなりません。
これは最近の報告ですが、アメリカでは、ご承知のように新しい薬とか、新しいバイオ製品が登録される中でその半分は、バイオベンチャーから出ています。ゲノムとか再生医療などを見ましても、8割9割は公的研究機関か、大学か、ベンチャーから出ており、大企業ではないわけです。日本はどうかというと、まったくまだまだ逆なのです。まだまだ大企業が自己完結主義でやっている部分があるのです。私の主観ですが日本では「ベンチャーと大学」が特殊な分野では合弁するくらいのことを考えるべきだと思います。例えばベンチャー企業も大学に投資すべきだと。大学発のベンチャーが今、1500 とも 2000 ともいわれております。ところが、正直言いまして、私は(これらの経営は)なかなか難しいと思います。そうすると、より蜜に一緒に組んでやったほうが私はいいと思います。実は先月、東京でバイオサミットという会議がありまして、そこへ行ってきたのですが、こういう展開がないと日本は絶対アメリカに勝てないということをお話しさせていただきました。
■京都府立大学について
私の会社のメンバーにもここの卒業生がいますので、京都府立大学に対するイメージを聞いてみたのです。「京都府立大学ってどんなイメージなの?」と聞きましたら、「北山にありますね」と。「植物園の横にある大学」、「資料館の横にある大学」、「畑のある大学」、「農業」ですね。こういうイメージが出てきました。これは全部当たっていると思います。しかし、私が考えますのは、京都府立大学は「京都の大学」だというメッセージが絶対必要かなと思います。といいますのは、立命館大学でしたら、立命館太平洋アジア大学というのを大分県につくることができるわけです。同志社大学も奈良県でもどこにでもできますよね。京都府立大学は、大阪につくると京都府立大学とは言えないから。私たち社内の何人かで議論したんです。「京都府立大学って」ということで話し合いをしたのです。そしたら、やはり「京都の大学」だというメッセージがもっと明確にあったら、もっと分かりやすいかなということでした。それをベースに戦略的、戦術的に京都府立大学を私たちはどう見たらいいのか。
これは私の主観ですがやはり、歴史と文化の「知」の大学だというメッセージが必要だと思いますし、また、伝統と格式の「技」の大学だということがあれば、もっと分かりやすいかなという感じがいたしました。私も韓国高麗大学の先生を一時期やっていたのですが、韓国の人も、日本への造詣心がものすごいわけです。だから日本に留学したい。この近辺に来たいという学生さんがいっぱいいらっしゃいます。やはり京都という特性で、京都を知らない地球人はいないと思いますので、特にアジアにおける科学と芸術のハブだという形のメッセージを送られると、もっと分かりやすいかなという点で「京都府立大学は京都の大学だ」と言う事でございます。
2番目、ちょうど1カ月前にイノベーション 25 戦略会議の記事で、皆さん読まれたと思いますが、毎日新聞の朝刊に書いてあったある先生の一文ですが、「大学は大相撲に学べ」と書いてありました。これは、ある点で、的を射ているかなと思います。というのは、大相撲が始まりますが、幕内力士の 28%は、両横綱を含め、上位はモンゴルの人とか外国の人なんですね。当初は非常にアレルギーがあったのですが、この先生がおっしゃるのは何かというと、「大相撲は国際化でやっと生き残りに成功した」ということが書いてありました。今、サッカーなどを見たら、どこでも外国人がいっぱい入っているのですが、大相撲だけは国技だからということで反対の議が挙がったのですが、現実はもう、そうではなくて、「国際化で生き残りが果たされた」と。この見方は面白いなと思います。
そこに書いてあるのですが、「日本の大学は知の鎖国状態にある」と。京都府立大学は京都の大学だということですので、アジアのハブになるということをより強くメッセージされたら。私は、この一文が言い得て妙な感じがするなと思いました。これは私の会社の考えですが、ファーマフーズは今ちょうど 80 名くらいなんですが、人材確保の理想型として、私は、3分の1理論というのを考えています。海外出身の専門家を3分の1集める。女性の専門家を3分の1集める。あと残りは平均的な男性。ポイントは、この平均的な男性が下支えをきっちりとやるということですね。海外から専門家が来ても文化の違い等でいろいろとトラブルがあるのです。けれども、互いに協力すると、トラブルがないような形で受け入れの措置ができる。女性の専門家というのはやはり時間的な制約があるじゃないですか。お子さんをみないといけない、家庭をみないといけない。しかし、その中で力を発揮するのです。
3分の1が海外の人であると問題があるのではと先生方は感じられると思うのですが、逆に、私を含めて多くの先生方が若い一時期、海外に行かれたと思います。私はカリフォルニア大学のバークレー校にいたのですが、ほとんど半分以上がアジア系でありますし、いろんな形の外国の人が受け入れられ、それがうまく吸収できるので、アメリカのサイエンスが進んだ部分もあると感じました。すべてではないと思いますが。そう考えますと、恩恵を受けた私たちは、日本に帰ってきてそれを全部忘れてしまって、門を閉ざすのはおかしいじゃないかと。何かアクションするとやはりリアクションがあるのですが、門戸を開くことが、実はハブになるということではないかと、考えております。
もう一つは、地域における京都府立大学がシンクタンクになるというならば、伝統と革新の「技」の大学という形で、いろんなことをやられたほうがいいかなということです。府立大学のホームページを何回かよく見ました。パンフレットも見ましたが、例えば、京野菜や、緑茶、麹、竹、北山杉、京町屋とか環境部門がございましたし、建築のデザインセクションもございましたので、こういうものをより具体的なテーマに、もっと分かりやすくやられたら良いと考えました。
例えば麹ひとつにしましても、今、有用菌といったら乳酸菌と思われているわけです。ところが酒、しょうゆ、みそというのは麹菌です。麹というのは乳酸菌よりはるかにいいのです。国菌というのですね。例えば、桜が国花でチョウチョでしたらオオムラサキが国蝶のように、麹は国の菌ということです。私は、麹こそまさに日本で、もっと研究すべきだと思います。京野菜も、京都府立大学の中村先生がやっておられますようにもっと研究が出来ればと思っています。京都大学の先生はアフリカの薬用植物をやっておられたり、東南アジアのものをやってみたりするのですが、私は、京野菜というのはまだまだやれるところがあるなという感じで思っていますし、技の大学としてもっと京都のことを研究されてはどうか。
北山杉だって非常に面白いと思うのです。皮をはぐ。あの皮をどう使っているとか、いろいろあると思うのです。私共がビジネスを展開するのだったらこういうことがあるなと思います。これに関係しまして、今、京野菜に取り組んでいるのです。まず京野菜麹という「野菜麹」をつくってしまう。それから、プロテアーゼとかセルラーゼとかいろんな性能をぐっと引き上げておいて、発酵させて、京野菜何々とかというのを作るということをやっています。すでに私たちは京野菜ヨーグルト、これは商標を取っております。それから京野菜ジュース、京野菜青汁。商標も取っております。
この間大手飲料メーカの所長さんと会ったのですが、「例えば、京野菜ジュースというのがあったらどうしますか」と聞いたら、「すぐ応用させてください」とおっしゃいました。というのは、「おいしい野菜ジュース」などいろいろな製品があるのですが、もう限界があるわけですね。そういうところに「京野菜」を考えると消費者が強く、あこがれがあるわけですね。私たちが九州に行くときでも、京都駅で京野菜つけものを買って行ったら、「わあ、京野菜が来た」と言うじゃないですか。この喜びの部分をサイエンスでアプローチします。京野菜といったらすぐ漬物となりますが、ヨーグルトとか新しい形で私たちはやろうと思うのですが、こういう点に先生方のご指導を受けるなら、もっと私たちの限界を超えるものができるのではないかと考えております。
もう一つは、京町屋。これは、先生方のカリキュラムの中で京の建物のデザインということが書いてありましたので、これは私たちにも関係があると思います。(写真を指して)ちょうど 90 年ものの京町屋がこれです。私たちはバイオをやっていますが、さきほどの話のように京都発バイオベンチャーのやるべきテーマとして、京野菜の研究開発に取り組んでいます。その関連でいろいろ調査して、会社の新規事業を検討しているうちに、「京都の町屋でレストランをやろう」ということになりました。(写真の看板を指して)京町屋の雰囲気を生かした「貴匠桜」という名の京野菜レストランです。東山建仁寺の近くです。皆さん、一度お越しになってください。
3番目に、戦術的にまずはシンクタンクをどうしたらいいかということです。知的情報の発信基地になるということを明確にメッセージする必要があると思います。そして一方では知的情報が集う地点。こういうシステムをつくるということが、私は、京都府立大学が、より積極的にやるべきだと。すでに、キャンパスプラザ京都でやっておられるのですが、できましたら、市民の皆さんに京都府立大学にお越しになっていただく仕掛けを絶対つくる必要があると思います。先生方と京都のオピニオンリーダーによるマッチングの講演会を仕組むというのが必要だと思います。例えば2年間のプログラムをつくります。2カ月に1回、例えば偶数月にすると決めましたら、2年間で 12 人ですよね。京都にある会社のトップの方々に来てもらって、芸術と文化とサイエンスということのトップセミナーをやるということを決めるとどうかなと思うのです。これは非常に難しい。難しいけれど、私はできると思うのです。
2年間分はフィックスして、この場所でやる。そこに、本学の先生方とペアで新しい哲学思考という形で、ものづくりと人づくりをやりましたら、私は京都の大学としての京都府立大学が定着すると思うのです。こんなことをすることが実は知の発信になると思います。もう一つ、知的情報が集うセンターになるべきです。今度はトップセミナーの方々が来られて、いろんなことをやってもらおうと思うと、大学の入口が狭い。(写真を指して)私には京都府立大学の入口が狭いなという感じがしました。表も裏も狭い。フェンスがずっとありますので、セキュリティはいいと思うのですが、非常に狭いと思います。(次の写真を指して)こちらは京都大学の桂キャンパスですけれども、どこを回ってもフェンスがないわけです。フェンスが一つありますが、それは京都大学と書くための看板です。大学の看板だけがフェンスなのです。京都府立大学の校門では、「入口に通行証がない人は入れない」と書いてあることです。ところが京都大学桂キャンパスの場合は、「開かれた大学ですから、どうぞ入ってください」というわけです。この違いは何でしょうか。
アメリカではオープンなキャンパスが多いのです。京都大学の場合はどこでも入れますし、レストランは一般の人が入れるというシステムになっています。それで私が考えますのは、府立大学でフェンスをなくすことはできないのですが、もっと入口を一般の人も入れるという形にしないと。人を呼んで集いのセンターにするということをもし考えるのだったら、そういうことが必要かなと思います。もう一つは、先程生協、それから学生会館などを回って見てきたんですが、私たちが企業的に考えましたら、明るいコンビニを入れる。コンビニを入れましたら、もっと品揃えがありますし、購買力がぐっと上がると思うのです。今、ある大学では、ローソンと組んでコンビニを入れています。全然違和感がないと思うのです。もう一つは、スターバックスなどのコーヒーチェーン店を入れると、もうそれだけで府民が入ってくると思うんです。大学周辺を車で回ってみたことがありますが、先程も話しましたが、京都府立大学の周囲はほとんど全部フェンスですよね。私は、農場の中程のところで可能でしたらフェンスを取り払い、そこを「ガーデンスターバックス」というものにしましたら、街の人がいっぱい入ると思うんです。学生さんもいっぱいになると思うんです。それは収益になりますし、農場が一般の人に見られる農場になりますので、もっと生きたものになると思います。ローソンとスターバックスと、入口が広くなるだけで。そんなに費用が掛からなくて、開かれた大学になりうるのではないかと。簡単にできることはこんなことであると。ずいぶん変わるのではないでしょうか。
実は私たちもやっているのでこういうことが言えるという実証ですが、「ギャバ・ストレス研究センター」というのを毎年やっていますし、「葉酸と母子の健康を考える会」や、「たまご研究会」フォーラムというのを、やっております。毎年 200〜300 名募ってやるんです。私たちのような 80 名の会社でやるのは大変なのですが、コンセプトを明確にしまして、きちっとしたメッセージがあると、全国からお越しになっていただくのですね。来ていただくと、そこに情報が付いてきます。やはり大学にお越しになっていただくと必ず情報が付いてきます。批判も付くのですが、新しい情報が付くのではないかと思います。素晴らしい方々に来ていただくと、大学でのサイエンスも、芸術としても新風が吹くと思います。そして、人・科学・芸術・伝統と革新の京都府立大学があらためて発進するのではないか、ということを最後に申し上げて終わりにいたします。ありがとうございました。
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